ところで信玄を見てくれ。こいつをどう思う?

すごく…弱いです…。島根大学将棋部OBの信玄さんが気まぐれで更新します。

twitterタグより 対銀冠穴熊②

 こんばんは。昨日に引き続き銀冠穴熊との攻防を書いていきます。昨日は触れていませんでしたが、女流王位戦の3局目が三間飛車と銀冠穴熊でしたね。後手の里見先生は5筋の歩もつかず一直線に穴熊を組んでいましたが、先手は石田流に組み替える選択肢もありましたね。もし4六銀美濃を早めに組んで5五歩を見せると後手も5四歩とついたのでしょうか。この戦型は定跡が整備されていないためなかなかどんな展開になるのかわかりませんね。私がブログに書いているのも一つの可能性ぐらいに考えてもらえると幸いです。

 それでは続きです。前回は▲3五銀に❶の変化までやったので、今回は❷の△3四歩からいきます。△3四歩には▲3三歩が有力手だと考えています。没手順となりましたが当初は▲2四歩を主軸に考えていました。軽く紹介します。

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 まず△同銀ですが▲3四銀△2三歩に▲3三歩とします。△3一金には▲6八角が好手。次の2四角~2三歩が厳しいので△2五銀ですが▲同銀として3二の打ち込みを見てさせるでしょう。△3三金には3四銀打、3三角には▲2四歩です。よって▲3三歩には△同桂から精算するしかないですが、最後に▲3五歩と△3五桂を消しつつ次の▲3四桂をみせて先手やれそうです。

 問題は▲2四歩に△3五歩の変化です。以下▲2三歩成△同金右となった局面で手が難しいです。▲4四歩や▲3二歩、▲1五歩を考えていましたがどれも自信がありません。金の縦二枚並んだ形が相当堅いのです。よって没となりました。

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 いきなり横道にそれましたが、△3四歩に▲3三歩を検討します。これには△同桂が自然でしょう。かえて△3一金引は▲2四歩から▲3二銀、△3五歩には金をとって▲1五歩で戦えると思います。▲同桂成に△同角と△同金直がありそうですが、まず△同金直をみてみましょう。

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これには一旦▲4六銀と引いておきます。次に1五歩~1三歩~6五歩~2五桂の狙いが残っているので後手は△2四歩と受けますが、そこで▲6五歩△同銀▲5七桂で攻めを続けます。以下△7六銀▲3三角成△同角▲7六飛△9九角成▲7四飛で下図。

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一見7三歩でおさまりそうですが△7三歩▲5四飛△5二香には▲8三銀、△5二歩には▲4四歩でギリギリの攻めを繋げようとします。繋がっているかはわかりませんが、こうなるなら先手を持ってみたいと思います。

 次に△3三同角を検討します。これには▲2五桂とします。二枚替えの駒損の変化がちらつきますが大丈夫でしょうか。▲2五桂に△4二角も考えられ、まずこちらからいきます。

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 上図より▲2五桂△4二角▲3三歩△同金(△3一金は▲4四歩がある。以下△同歩は▲同銀△2四歩に▲6八角。△3五歩は▲4三歩成で△2四歩には▲6五歩△同銀▲4二と△同飛▲5三角で手が続く。)▲6五歩。

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▲6五歩で角道が通りよさそうに見えますが、攻めを繋ぐのは容易ではありません。△3五歩には▲3三桂成△同金▲4一金。△6五銀には▲3三桂成△同金▲5三金△同角▲3三角成△2二金▲3四銀。6四角に3七歩を用意しながら馬に紐をつけますがやや細いかもしれません。また▲3三桂成に△同角は▲同角成△同金▲4六角△6四角▲同角△同歩▲4六銀で難しい形勢です。

 次に問題の駒損の変化です。▲2五桂に△3五歩(下図)。

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図以下▲3三桂成△同金直▲6五歩△同銀(△5三銀は7一角~5三角成~4二銀)▲7一角△3二飛▲3五角成。

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駒割は角と銀桂交換の駒損。次に▲2四歩がありそうですが△3四歩~△3五桂とされるとちょっと自信がないです。実際はいい勝負ということで❷の変化はここで終わります。

 

 以上で①の攻防を終わります。振り飛車もしっかり銀冠に囲えていれば右辺から手が作れることがわかったと思います。なお後手が7四歩~6四銀ではなく4二銀と更に固くしようとした場合は、一度▲5八飛と牽制して△5二飛に5九飛~1八香~1九飛と地下鉄を目指すのもあるかなと思います。

 

 次に②の後手が穴熊のハッチを閉めずに銀を繰り出してきた場合です。

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①で解説したとおり次に△7五歩▲同歩△8六歩▲同歩△6四銀の仕掛けがあります。しかし①とちがってまだ銀冠に組めていない先手は3五歩~2五歩の反撃は反動がきついです。よってこの状態で手待ちして、▲6五歩というのが普通の指し方になりますかね。しかし、当然私はそんなことはせず右辺での手作りを目指して▲2七銀とします。果たして大丈夫なのでしょうか。

 

上図より、▲2七銀△7五歩▲同歩△8六歩▲同歩△6四銀▲3五歩。

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 囲いが完成していないうちに仕掛けられましたが突き捨ての歩は取っておいてからの▲3五歩ですね。①では▲3八金と完成した状態からでしたが、今回は金が浮いています。その代わりどこかで▲3八飛とまわることができます。ここで後手は同歩と7五銀にわかれます。まずは△7五銀からみていきます。

 上図より、△7五銀▲3四歩△同銀▲5五歩△同歩▲5九角。

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よく棒銀の銀を5段目に出させると振り飛車失敗と言われます。ですが、それは左辺だけで勝負するならの話で、今回は右に争点を求めるのでまた違ってきます。△7五銀には一度▲3四歩と取り込んでから▲5五歩と突きます。ダイレクトで6六角と出られるのを防ぎながら、5筋に歩が打てるようになる効果があります。▲5五歩に△3五歩とすると▲6八角△7六歩に一度▲3八金と締まっておいて、次に▲3五銀や▲5四歩を狙って戦えそうです。戦いの最中ですが、一度自陣に手を入れるのが呼吸ですね。最後5九に角を引くのがポイントで、次に飛車の転換を見せます。例えば次に△7六歩なら▲3八飛とまわって次に▲2五桂があります。防いで△3五歩なら▲3六歩と合わせて△同歩は▲同銀~▲3五銀直、他の手なら▲3五歩△2三銀▲3四歩△2二角▲2五歩とガンガン攻めます。したがってこの局面では一度7七歩と焦点に歩を打つのが良いでしょう。飛車が横に逃げると△8六飛で悪くなります。

 上図より、△7七歩▲同飛△7二飛▲3五歩△2三銀▲2五歩△同歩▲同桂△2二角▲3四歩。

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△7七歩は▲同飛と取るしかありません。ここで△8六飛もありそうですが、▲7五飛△8九飛成▲3八銀打△7三歩▲3五歩△2三銀▲7六飛と進めてどうでしょうか。がっちり銀を投入して鉄壁にして3五の拠点を作ってから、8六飛車のぶつけをみせます。龍は作られていますが駒得していて、玉の硬さも優っているので先手もやれるでしょう。よって、△7二飛ですが▲2五歩からこじ開けて▲3四歩。桂馬交換して7八飛~3八飛や5四歩など先手も手は作れそうです。△同銀には▲3三歩△2三金▲2四歩△同金▲2六歩として、△2三金には▲3五歩。また5四歩や飛車の転換を狙ってこれもやれそうです。

 局面を戻して、▲3五歩に△同歩の変化をみて今回は終わりにします。

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上図より ▲2五歩△7五銀▲2四歩△3四銀▲3六歩。

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3五歩~2五歩は①でも出てきた攻め筋です。2五歩を取る変化は後述します。

後手は▲2五歩に構わずに△7五銀と出てきますがそこで▲3六歩と合わせるのが好手。次に▲3五歩と銀が死ぬため後手も忙しいです。△同歩▲同銀△3五歩は構わず▲同銀直とゴリゴリいきます。なので△3六歩~△2四角と必死に受けますが・・・

 上図より△7六歩▲5九角△3六歩▲同銀△2四角▲3五歩△2三銀▲2五桂。

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▲3五歩~▲2五桂がひねった順で、次に端攻めや3七玉~2八飛などを狙っていて先手面白そうです。左辺で狙われた大駒を逃がしながら右辺で手を作り、狙いが見事に実現しました。

 最後に▲2五歩に△同歩と取る変化です。①と同じく▲2五桂~▲3五銀とします。

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後手は△2四歩と△3四歩が考えられますが、△2四歩には▲3四歩が狙いの一手。次に▲1五歩や▲3八飛があり先手は手に困りません。▲3四歩に△7六歩▲6八角△6六角は▲2二歩~▲2四銀や▲1五歩、▲3三桂成~▲2五歩など攻めて十分です。△3四歩には▲3三歩と打ちます。

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以下△同桂▲2四歩△3五歩▲2三歩成△同金▲3三桂成△同金上(△同角は▲2五桂~▲3四歩でよし)▲3六歩でどうか。先手玉は薄くあまり自信は持てませんが、これも右辺の戦いになり飛車も使えそうなので難しい形勢としておきます。

 

以上①でも見られた後手の仕掛けを見てきましたが、①と違って銀冠に組めてないものの、飛車の転換を含みに右辺で手を作っていきました。こういう指し方はとても怖いですが、これも一つの戦い方です。次回は△6四銀への▲3五歩~▲2五歩の仕掛けをみていきます。①とどう違ってくるのか注目です。お盆を挟むのでいつ書けるかは未定です。それではまた。